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FAQ

アナログ/インターフェイス


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デルタシグマADCでは、入力信号を与える前に折り返し防止フィルタが不要だと聞いたのですが、それは本当ですか?
本当ではありません。デルタシグマADCでは、連続的に得られる出力データの数倍から数万倍も高い周波数で標本化を行なっています。標本化周波数が高いだけであるため、その標本化周波数に対応するための折り返し防止フィルタは必要です。
出力データーレートと標本化周波数が大きく離れているため、折り返し防止フィルタに対する要件は厳しくありませんが、きちんと計算する必要があります。
商用電力の電圧/電流測定用のデルタシグマADCでは、なぜ信号入力が負でも測定可能なのですか?
もし負電圧では測定できないADCの場合、例えば直列容量を用いて交流結合した後にしかるべき直流バイアス電圧を用いて正電圧領域にすれば、測定は可能です。しかしながら容量のおかげで位相が変化してしまうため、例えば交流信号の周波数の1/10の阻止周波数で交流結合すると、位相は5.7度ずれます。部品のばらつきおよび使用環境により、複数の交流結合回路のずれは全て正確に同じではありません。この「ずれ」のばらつきが誤差の原因となります。交流結合ではなく直接測定すれば、誤差の原因が少なくなり上記の問題も小さくなります。さらに、阻止周波数を低くすると容量の物理寸法が大きくなり、コストも増えるという短所もあります。負電圧を直接測定すれば、これらの短所も回避できます。
複数パッケージに分散している複数個のデルタシグマADCで、同時に標本化を開始するにはどうすれば良いですか?
複数個のSAR型ADC、または同一パッケージ内の複数個のデルタシグマADCであれば、同時に標本化を開始する事は容易です。しかし、複数のパッケージに分散して入っている複数個のデルタシグマADCで同時に標本化を開始するのは、同期制御入力ピンでもない限り困難だと思われがちです。
しかし、デルタシグマADCに与えるクロックを外部回路から別々に与えれば実現可能です。複数パッケージを別々に設定する際、設定中ではないパッケージのクロックは止めておきます。ただし、測定開始フラグは立てておきます。全てのパッケージで設定が完了した後、全てのパッケージに同時にクロックを与えれば、同時に標本化が開始できます。
SAR A/DコンバータのデーターシートにはINL、DNL等の個別の誤差が記載されているだけで総合誤差が記載されてはいない場合があります。このような場合、総合誤差はどのように予想すればいいですか? 個別の誤差の最大値を各々加算して得られる総合誤差の大きさは大変大きくなりますが 経験的にはそんな大きな総合誤差になるはずがないと考えています。
個別の誤差が互いに相関がなく、かつ各々の誤差自体には規則性がないとします。この時、各々の誤差は相互に独立しており、かつ正規分布していると仮定します。このような場合、総合誤差の第一近似は、RSS手法(Root Sum of Square)を用いて、以下のように予想する事ができます。

総合誤差第一近似
= (要因Aの誤差^2 + 要因Bの誤差^2 + 要因Cの誤差^2 + …..)^(1/2)

各々の要因の誤差は、全て揃えておけばLSbでも電圧でも構いません。
SAR A/Dコンバータのビット数とダイナミック レンジとの関係を表す下式では標本化周波数の項がありません。下式は、標本化周波数とは関係なく成立しているのですか?
A/DコンバータのS/N比(単位: dB)=6*N+1.76
N: ビット数
上式では隣り合う標本同志の時間間隔の領域で量子化誤差のエネルギ積分をします。積分を終了した時点では結果の中に標本化間隔の時間要因は含まれません。上式の解釈は1標本におけるS/N比と言う事ができます。標本化周波数を変化させると、1標本あたりの信号エネルギも量子化誤差エネルギも変化します。同時に一定時間内の標本総数も変化します。すなわち、一定時間内の「信号エネルギ総和」対「量子化誤差エネルギ総和」の比は変化せず、一定です。従って、上式は標本化周波数とは関係なく成立していると解釈できます。
SAR A/Dコンバータの出力ビット数自体は十分ですが、誤差が大きいので小さくするにはどうしたら良いですか。
オーバーサンプリング技法を使うと誤差が小さくなります。例を上げて原理を簡単に説明します。
被測定信号の周波数から見て必要最低限の最高周波数(ナイキスト周波数)の2倍で標本化した後、隣り合う2つの標本を加算するとビット数は1ビット増加し、正確度は1/2ビット向上します。この原理を応用すると、必要最低限の最高周波数の4倍で標本化して結果を全て加算すればビット数は2ビット増加し、正確度は1ビット向上する事となります。
ところで、なぜこのような計算ができるかというと、標本化時の量子化に伴う量子化誤差エネルギのスペクトラムは白色ノイズで、かつ誤差エネルギの総和は標本化周波数には依存せず一定だと仮定しているからです。そうすると、標本化周波数を2倍にした時点で量子化誤差エネルギのスペクトラムは周波数帯域としては2倍に広がるため、被測定信号の周波数帯域内に混入する量子化誤差エネルギ量は半減する事になります。従って、S/N比は3 dB向上する事になります。また、ビット数としては1/2ビット分の増加と考える事ができます。

A/DコンバータのS/N比(単位: dB)=6*N+1.76
N: ビット数
デルタシグマA/Dコンバータは出力ビット数が多いため、このA/Dコンバータ自体にオフセットがあると結果を信頼できません。チップ内部ではオフセット補正を行っていますか?
デルタシグマA/Dコンバータの入力段では、一般的に標本化周波数の2倍(または4倍)の周波数で標本化を行っています。実際の標本化期間以外の期間でオフセット補正を行うためです。従って、デルタシグマA/Dコンバータの出力はオフセットに基づく直流的誤差を補正済みの出力です。ご安心ください。
デジタル ポテンショメータ/レオスタットのカタログをみると、タップ数が2のべき乗の製品にくわえて2のべき乗+1の製品もあります。両者は何がどのように異なるのですか?
下記の図を用いて説明します。8ビットのデジタル ポテンショメータを仮定します。8ビットなのでコードは0x00から0xFFまで256通りあります。0x00をMute状態に割り振るとします。0xFFを、多少の減衰がある図Bにするか、あるいは減衰なしの全振幅にするか(図C) を考えてみます。ここで思い出して頂きたいのはコードと減衰の関係式です。
図B: もし減衰比=コード/256にすれば256は2の冪です。コードの最大値は255なので減衰比の範囲は0/256~255/256となります。つまり最も減衰の少ない状態では1/256の減衰を伴っています。
図C: 図Bの最も上位にある抵抗を抜き去ると、減衰のない状態では255/255=1が得られます。すなわちこの場合、減衰範囲は0/255~255/255となるわけです。分母は2の冪ではありません。
図A: Muteが実現でき、かつ減衰のない状態=256/256も可能となり、分母は2の冪となる方法です。減衰比の数(分子の数)は257個=「2の冪+1」となります。
8ビット抵抗ネットワークの実装方法

詳細は下記をご覧ください
AN1080 - デジタル ポテンショメータの抵抗値のばらつきについて(p. 4、DS01080A_JP)
http://ww1.microchip.com/downloads/jp/AppNotes/01080A_JP.pdf

英文原文
http://ww1.microchip.com/downloads/en/AppNotes/01080a.pdf
デジタル ポテンショメータの応用では入力コードに比例した出力が得られるのは知っています。しかし場合によっては指数的、対数的な変化をする出力を得たい場合があります。そのような場合はどうしたら良いですか?
下記のデータシートで説明しています。内容自体は汎用なので、どの製品にでも応用可能です。

『MCP444X/446X不揮発性メモリ内蔵7/8ビット4回路入り I2C デジタル ポテンショメータ』 、p.76 (8.5 リニア デジタル ポテンショメータによる対数ステップの実装)、DS22265A_JP
(和文)http://ww1.microchip.com/downloads/jp/DeviceDoc/22265A_JP.pdf

英文原文:http://ww1.microchip.com/downloads/en/DeviceDoc/22265a.pdf
従来のデジタル ポテンショメータ製品は正の電源用しかなく、また信号電圧振幅も正でないといけないという制限がありました。負の信号電圧も扱える製品はありませんか? ただしI2C/SPIなどの通信制御は従来通り正の電圧のみで使います。これらの通信制御線が負の電圧になる事はありません。
MCP41HV51及びMCP41HV31なら負の信号電圧も扱えます。デジタル ポテンショメータファミリの高電圧対応製品です。両者の相違はビット数だけで、前者は8ビット後者は7ビットです。通信制御方式はSPIです。

動作電圧範囲
アナログ (V+ & V-): 10V to 36V or +/- 5 ~ +/- 18 V (対称でなくても構わない)
デジタル (VL、(L: Logic))): 2.7V to 5.5V
デジタル用電源範囲はアナログ電源電圧範囲内にあれば良い
(下の図4-2を参照)
なお電源投入順序に制約はありません

大出力電流: (5、10、100)kΩに対し、(25、12.5、6.5) mA
FIGURE4-2

MCP41HV31の製品情報ページ
http://www.microchip.com/wwwproducts/Devices.aspx?dDocName=en561198

MCP41HV51の製品情報ページ
http://www.microchip.com/wwwproducts/Devices.aspx?dDocName=en561199

MCP41HVxxファミリは 今のところ(1回路入りのみ、RAMベースのみ)です。
機械式の3端子型デジタル ポテンショメータを2端子型のレオスタット モードで使う場合、固定抵抗の一端をワイパー側に接続して使う事を強く推奨されていますが、半導体デジタル ポテンショメータの場合にはそのような制約はありますか?
半導体デジタル ポテンショメータの場合にはそのような制約はありません。固定抵抗の開放側をワイパー側に接続して使っても、開放のまま使っても構いません。固定抵抗の一端のピン入力はCMOSのゲート電極ではないからです。ただし、開放せずにワイパー側に接続した場合、ワイパーの直列抵抗が等価的に減少します。固定抵抗の開放側と接続する事で抵抗の並列接続となるからです。
機械式の場合、開放のまま使うと摺動子と固定電極板との接触不良により意図しない時に回路が開放してしまう事が問題です。しかし、半導体の場合にはあてはまりません。
開放で使った場合に空中電位の心配をされる方がいらっしゃいます。例えば、等価的に形成されるアンテナの4分の1波長に相当する長さが1 mmだとすると波長は4 mmとなり、約75 GHz近辺のアンテナとなります(75 GHz = 30万キロメートル/秒÷4 mm)。しかし、回路は75 GHzでは応答しないので当該ピンを開放で使っても支障がないのです。
3端子型デジタル ポテンショメータ モードと2端子型レオスタット モードでは誤差がかなり違います。どうしてこんなに差があるのですか?
固定電極板と抵抗網は温度依存係数も電源電圧依存係数も同じです。3端子型デジタル ポテンショメータ モードでは抵抗網と摺動子/ワイパーの間で、分割比で出力を得ます。比の分母と分子で温度依存係数/電源電圧依存係数が等しいため、変化/誤差を打ち消し合うのです。ところがレオスタット モードでは比ではなく分子に相当する箇所だけを用いますので、打ち消し合いができません。このために、ご質問のような差が生じます。
汎用SAR ADCを使う際に信号源インピーダンスが高いと、どんな問題が起きるのですか?
この場合、入力信号の高域周波数で大きな誤差を生じます。
汎用SAR ADCの入力におけるサンプル&ホールド回路はR とCによる時定数を持つローパスフィルタです。信号源インピーダンスが高い場合、この回路網と信号源インピーダンスとの直列合成回路網の特性により高域阻止周波数が低下して周波数特性の高域で誤差が大きくなります。下図は、弊社SAR ADC製品であるMCP300xのデーターシート(DS21295D)からの引用です。MCP300xはSPIインターフェイスを備えているため、SPIクロックがSAR ADCの変換クロックとして使われています。下図が意味する事は、SAR ADCの精度を維持するには、入力抵抗が高くなるにつれ駆動クロック周波数を下げなくてはいけないという事です。すなわちSAR ADCで標本信号の最高周波数を下げなくてはいけないという事です。
SAR ADCの精度を維持するには、入力抵抗が高くなるにつれ駆動クロック周波数を下げなくてはいけないという事
汎用SAR ADCを使う時、ADCの入力ピンにクロックに同期したグリッチが観測される事があります。 グリッチがあるとADC変換結果にどんな悪影響を与えますか? このグリッチが生じないようにするにはどうすればいいでしょうか?
グリッチが生じている場合、変換結果は誤差を含みます。
汎用SAR ADCの入力におけるサンプル&ホールド回路はR とCによる時定数を持つ充電回路と考える事ができます。時定数が大きい場合、サンプル&ホールド回路の充電により多くの時間を要します。従って、十分に充電させる事ができる繰り返し周波数上限は低下します。このような状況で高すぎる周波数のクロックを与えると、充電が完了する以前に変換が始まってしまいます。この変換開始により、電荷が完全に蓄積されていない容量から電荷を引き抜く事になります。このため入力ピンにグリッチが観測されるのです。この結果、データーシートに記載されている誤差よりも大きい誤差を生じます。対策としては、周波数特性を低下させても良いのであれば、グリッチが問題にならない程度までクロック周波数を下げる方法が良いでしよう。周波数特性を低下させたくない場合は、ADCの入力に標本化周波数以上のフルパワーバンド幅をもつバッファを挿入するのが良いでしよう。
汎用SAR ADCを使う時、ADCの入力ピンにクロックに同期したグリッチが観測されたため、 信号源とSAR ADC入力との間にボルテージ フォロワバッファを挿入して特性改善を図ろうとしました。しかし、期待したほどグリッチが減少しません。信号のタイプによってはかえってバッファ出力の振幅が小さくなってしまいました。グリッチを生じないようにするにはどうすればいいのでしようか?
ボルテージ フォロワバッファのフルパワーバンド幅が標本化周波数よりも低いオペアンプを使っている可能性があります。
ボルテージ フォロワバッファを挿入する目的は、標本化周波数でも充分に低い信号源インピーダンスでSAR ADCを駆動する事です。ボルテージ フォロワバッファを構成する最も簡単な方法はオペアンプを使う方法ですが、この時どんなオペアンプでも使える訳ではありません。参考として下記の弊社アプリケーション ノートのp. 8に標本化周波数とフルパワーバンド幅(FPBW)の話題についての記載があります。
  AN723 - オペアンプのAC仕様とアプリケーション
図19

(注: 本書が執筆された時、MCP601のデータシートではFPBWを約80 kHzとしていました。しかし、現在のMCP601のデーターシートではFPBWを140 kHzとしています。)
MCP39xxのような電力計測用ΔΣ型ADCを汎用ADCとして使う場合、MCP34xx/355xのような汎用ΔΣ型ADCの使い方とは何が違うのですか?
入力に負の電圧レンジを許容できるかどうかが最も大きな違いです。
弊社製品はMCP39xxのような電力計測用ΔΣ型ADCでも、MCP34xx/355xのような汎用ΔΣ型ADCでも正の単電源だけで動作します。そのため、MCP34xx/355xのような汎用ΔΣ型ADCが許容するのは正の電圧レンジ入力だけです。一方、MCP39xxのような電力計測用ΔΣ型ADCでは交流信号を扱う必要があるため、負電圧が印加されても正しく計測できるようになっています。
ΔΣ型ADCとSAR ADCとの相違点は何ですか?
応用上の主な相違を下表にまとめました。
ΔΣ型ADCとSAR ADCとの相違点
電圧と電流とを同時に計測した結果を使用して瞬時電力を求めたいのですが、汎用のSAR ADCを1個だけ使って実装する方法を教えてください。
SAR ADCを1個しか使わない場合、電圧の標本化タイミングと電流の標本化タイミングは一致しません。しかし、その時間差が一定ならば簡単に補正できます。
『MCP6L2 and PIC18F66J93 Energy Meter Reference Design (52088B)』は汎用単電源オペアンプとPIC18F66J93が内蔵する1個のSAR ADCを使った電力計リファレンスデザイン ボードの取り扱い説明書です。これに、下記のような説明があります。
電圧の標本化と電流の標本化の時間差が既知の場合、この時間差は標本化される信号同士の位相差と考える事ができます。異なる位相で標本化した電圧と電流との瞬時値を用いて計算した電力の瞬時値に下式を当てはめれば、本来の瞬時値に補正可能です。
なお、商用電源とADCとの間のインターフェイス回路で生じた位相差も、この式を用いて補正可能な場合があります。
商用電源とADCとの間のインターフェイス回路で生じた位相差
商用電源の電流計測システムにおいて大きなダイナミック レンジが必要なのですが、コストを下げるためオペアンプとMCU内蔵SAR ADCを使ったシステムを開発しています。しかし、期待したほどダイナミック レンジが広く取れません。もっと広げる方法はありませんか?
『MCP6L2 and PIC18F66J93 Energy Meter Reference Design』は、汎用単電源オペアンプ(MCP6L2) とPIC18F66J93が内蔵する1個のSAR ADCを使った電力計リファレンス デザインです。本基板は、被計測電流のダイナミックレンジを広げるために大電流用の計測経路と小電流用の計測経路の2系統を持ち、双方をオーバーラップさせています。この方法をお試しください。
ADCを使って商用電源の電圧を計測する場合、インターフェイス回路で大信号振幅電圧レベルを3.3~5 V系の半導体が扱える程度まで減衰させる必要があります。またノイズ除去をするためのローパスフィルタも必要です。これらのインターフェイスは抵抗や容量で構成される回路網です。これらの回路網を信号が通ると信号の位相に遅れが生じます。この遅れをどうやって補正すればいいでしようか?
弊社のMCP39xxファミリは、位相が遅れた電圧計測系統と同程度の位相遅れを電流計測回路にも生じさせるような補正回路を備えています。このおかげで電圧計測系統と電流計測系統の位相差は原信号における電流と電圧の位相差と等しくなります。下図はMCP39F501の内部ブロック図です。電圧チャンネルに位相補正レジスタを持っている事がわかります。このデバイスの場合、位相補正が可能な範囲は電流チャンネルに対し 最大+/-3.2度です。
MCP39F501の内部ブロック図
MCP39F501を使うと、交流商用電源の電圧、電流、皮相電力、有効電力、無効電力の実効値が得られますが
(1) これらの実効値を得る際の交流波形は何波分を計測しているのですか?
(2) これらの値は電源周波数が変化すると、どうなりますか?
(3) また交流1サイクル分を何回で標本化していますか?
(1) 既定値では2波分です。この値はレジスタに書き込む事により設定できます。
(2) 45~65 Hzの範囲であればデバイスが自動的に追従します。
(3) 64個で固定です。
MCP39F501は シングルチップで交流商用電源の電圧、電流、皮相電力、有効電力、無効電力の実効値を出力し、かつ異常状態の検出と警報や、内蔵不揮発性メモリへの記録等の機能を持っています。このチップだけで電力計は実現可能ですか?
外部にMCUが必要です。その理由は表示、通信、自己診断、校正時期、遠隔操作や大容量記録等、外部のMCUが処理しなければならない仕事も多いためです。
MCP39F501デモボードでは交流電流計測にシャント抵抗を使っています。変流器(CT: Current Transformer)に置き換える場合、シャント抵抗を取り外し、変流器の2個の出力をシャント抵抗が接続してあった箇所に接続するだけで良いのですか? もちろん変流器の2個の出力は計測電流レンジに合わせた抵抗で相互を接続しています。
シャント抵抗を使っている場合、シャント抵抗両端の電位差はそれぞれMCP39F501のグランド電圧から計測しても正しく計測できます。しかし、シャント抵抗の代わりに変流器の2次側を接続した場合、商用電源とMCP39F501は絶縁されるため、変流器の2次側をMCP39F501に接続しても電位差を正しく計測できません。変流器両端の電位差は それぞれMCP39F501のグランド電圧から絶縁されているためです。
変流器の一端の電圧をV+、もう一方の一端の電圧をV-とすると、 MCP39F501は、 (V+ - V-)を計測するのではないか、と考えがちですが、実際は ((V+ - VAGND) – (V- - VAGND)) を計測しているのです。
すなわちV+であれV-であれ、AGNDから確実な電位差を持っている必要があります。
従って、グランドに対して電位を固定可能な、下図のような回路(MCP3914のデーターシートより引用)でないと正しい計測はできません。
参考文献:
トランジスタ技術 Special No.71、OPアンプから始めるアナログ技術、2000 Summer、 p.82
『はじめてインスツルメンテ―ション・アンプを使う人がおかしやすい誤り』
図7-6
不揮発性メモリ内蔵のデジタル ポテンショメータのデーターシートで出てくるWiperLockTMとはどんな技術ですか?
WiperLock テクノロジとは、マイクロチップ社製不揮発性デバイスでワイパを一旦「ロック」すると、「高電圧」コマンド以外の方法ではワイパ設定を変更できないようにする方法です。通常動作中のデジタル ポテンショメータに高電圧が印加されない限り、ワイパ設定が誤って変更される事はありません。
デジタル ポテンショメータをアナログ音響信号減衰用に使うので、減衰比を変更する際に絶対にクリック音を出したくないのですが、どうしたら良いですか?
特に対策を必要とはしません。
機械式アッテネータでは、機械的なMake-Break構造により、減衰量変化時にクリック音を出さないようにする工夫がされています。音響信号を通す回路が開放にさえならなければクリック音は出力されません。
ところでMCP401x/2xのような64タップ型でかつUp/Down信号によりワイパー位置を切り換える製品ではデーターシート内にワイパー設定時間に関する仕様と特性計測図があります。これはワイパー位置を1抵抗分変化させた場合の特性です。抵抗値が低いと素早く、高いとゆっくりと切り換え後の出力が安定します。概ね1 μs近辺です。これぐらい短い時間なので、音響用に用いてもクリック音は出ません。
またI2CやSPIでワイパー位置を切り換える製品の場合、データーシート内にはワイパー設定時間に関して、隣接する値に切り換える場合の特性図を掲載しています。例として、下はMCP444x/446x不揮発性メモリ内蔵7/8ビット4回路入りI2Cデジタルポテンショメータ データシート (DS22265A_JP)から引用した図です。低電圧とあるのは、このチップは不揮発性メモリ内蔵のWiperLockTMテクノロジ対応品であるため、 WiperLockを使うコマンドが高圧(高電圧)コマンドグループなので 対比的にWiperLockを使わないコマンドを低圧(低電圧=通常の電源電圧)コマンドと称しているためです。
この場合も、特に音響用に用いてもクリック音は出ません。
ワイパー確定時間

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