その通りです。入力部の差動増幅器のソース側電位近くでは、増幅可能領域外の入力電圧を増幅できません。差動増幅器がPMOSの場合、電源電圧側は測定できません。そのため、レールツーレール入力の製品では、PMOSによる入力差動増幅器と併せてNMOSによる差動増幅器も並列で使っています。NMOSの差動増幅器が電源電圧側を担当しています。
PMOSによる差動増幅器とNMOSによる差動増幅器は、信号領域を均等に担当しているかと言えばそうではありません。もしそんな割り振りにすると信号振幅電圧範囲中央あたりで担当が切り替わる際、出力オフセット電圧にも差が出てしまうからです。PMOS差動増幅器 とNMOS差動増幅器を並列に使うのですが、動作はPMOS側を優先させています。これは、グランド優先の設計をしているためです。PMOSとNMOSの動作が切り替わる際にオフセットの相違が出力電圧に表れるのを避ける事はできません。
単電源のオペアンプの場合、グランド優先の設計をするためオフセットの切り替わりを電源電圧側に偏らせています。このような特性があってもレールツーレール入力を使うか、このような特性を避けるためにレールツーレール入力を使わないかは大変重要な課題です。応用設計にあたっては必ず考慮してください。詳細は弊社応用ノートAN722 Operational Amplifier Topologies and DC Specifications (英文)の第5ページに記載しています。
なお、レールツーレール入力の場合の入力電圧とオフセット電圧の変化について、弊社オペアンプのデーターシートでは Input Offset Voltage vs. Common Mode Input Voltage というグラフを記載しています。下記はMCP629xのデーターシート(DS21812E)からの引用であり、電源電圧が5.5 Vの時の特性です。PMOS側とNMOS側の切り替えが信号電圧の中央あたりではなく電源電圧側に偏った4 Vあたりになっているのが良く分かります。